1ドルは何円になる?

依然として1ドル80円前後が続く

円とドルが低金利政策で並走する問は、多少米ドルの名目金利が上昇しても、実質金利で円かドルを上回っている間は、一常に80円を割り込むドル安円高の可能性を想定する必要があるだろう。もっとも、本邦貿易収支の悪化を受け、円高圧力もいくぶん和らいでいるため、80円を割り込んでもさほど深いものとはならず、78円程度に止まるかも知れない。

 

一方、円安方向への戻りに関しては前述の通り、2011年度中の大幅なドル円相場の反発は期待しづらい。加えて、本邦製造業の生産が徐々に回復するとの前提に立てば、85円を明確に上抜けるにはドルにとってかなり前向きな、あるいは円にとってかなり後ろ向きな材料が必要となろう。

 

さて、こうした見方に対するリスク要因は、米経済のV字回復とそれに伴う利上げ開始時期の前倒しである。この場合、感覚的にはドル円相場も安定した上昇基調を辿りそうなものだが、果たしてそうだろうか。米ドルには、特に利上げの初期段階では、いくつかの波及経路によるドル高抑制要因が働きやすい。例えば、利上げに踏み切れるほど景況感が改善した場合、米国の個人消費が好調に推移していると思われるが、これが米国の輸入増加を通じた経常赤字の拡大によって、ドル高を抑制する。

 

また、デュアルマンデート(2つの政策目標)を掲げる米FED(連邦準備理事会)が利上げに踏み切るとなれば、世界的な景況感も決して悪くはなかろう。こうした環境では、とくに米国投資家はより高いリターンを求め、対外証券投資を活発化させる。これもドルにとっては重石となる。

 

さらに、利上げの初期段階では、米国対内証券投資の主たる受け皿である米国債への投資が抑制され、必ずしもドルの支援材料とはなりにくい。結局、世界屈指の経常赤字国通貨であるドルが安定した上昇軌道を描くのは、そう容易なことではないとみている。